朝、ゴミ出しをした

朝なんとなくゴミ出しをした。思えば以前はこんなことできなかったな。明るい時間、しかも近所の人と出くわす可能性の高い朝の時間帯、以前だったら恐ろしくてとてもじゃないけど外には出れなかったな、カーテンの隙間から外をチラ見するのすらたじろんでいた。

さっきふとドアを開けると正面に人が歩いていた。俺は会釈するともなく顔を下に向けた。すると「おはようございます」と聞こえた。人当たりのよさそうな女性だった。誰かはわからないが、近所の人なのだろう。俺もおはようございますと言った。どうやらその人はゴミ捨てをしていたらしい。俺もゴミ出しでもしてみようかなという気分になった。ここのところ勝手口にゴミが溜まっていてうっとおしいと思っていたし。それでゴミを纏めて、捨てに行った。ゴミ捨て場から帰る途中、今度は前から男性が歩いてきた。ぶっきら棒で怖そうな感じがした。俺は威圧されたような気がして、また顔を下げて強張りながら歩いた。するとまた「おはようございます」と聞こえてきた。声の主はぶっきら棒の男性だった。あーそういうことかと思った。俺はおはっすと言った。ちゃんとおはようございますと言えなかったのは悔やまれる。あれだ、“あーそういうことか”というのは、普通におはようございますと言えばいいだけなんだなと、朝ゴミ出しなどで外に出て、人と出くわすと、おはようございますとただ言えばいいだけ、それだけなんだなと、難しく考えて恐れ過ぎなくてもいいんだなと、何の仕事してるんですか?いい年して無職で恥ずかしくないんですか?ちゃんと働けよ!とか言われないよな、そりゃ。ふつうにおはようございますと言えばいいだけ、ということがわかった。