ネット情報の拡散による発達障害の増加とその背景

なぜこんなに発達障害が増えたのかというと、昔に比べ社会生活の難易度が上がったから、などとよくいわれるが、それだけではないだろうな。思うに、SNSを中心としたネットでの情報の拡散も要因として大きいかと。

とくに、健常者としてでも生きていけるようなレベルの人たちまで発達障害の診断を取りはじめたのが、増加が加速度的となる切っ掛けになったように思う。そういった人たちは情報発信能力も高く、例えば、そういった人たちによって“ADHDあるある”的な情報が一気に拡散されはじめると、それを見た人たちが「こんなしっかりした人でもADHDなんだから自分もそうに違いない」と思い、一斉に心療内科に駆け込むことになる。

発達障害は医師によって診断基準はまちまちで、診断を付けるのに慎重な医師もいればそうでない医師もいる。なかには短期間の検査(なんなら初診で)でぽんぽん診断を付けるようなのもいるらしい。さらに、ネットで発達障害に関する情報に触れ続けた受診者側も、バーナム効果により病識が強まるなどして無意識に過大に困りごとや症状を主張する(記憶は無意識に改ざんされるものなので)こともあるだろう。

いまでこそブームは徐々に鎮まりつつあるが、3年ぐらい前まではSNSなどで発達障害系の投稿などがあるとしょっちゅう万バズしていた。そりゃあ影響されて診断を受ける人は爆発的に増えるだろう。

もちろん、なかには本来診断を受けるべきだったにもかかわらず福祉に漕ぎ着けれず絶望しながら健常者として生きていた人が、そいういった情報の拡散によって受診できたというケースもあるだろう。それによってその人は救われたことになるわけだし、もしかしたらそれによって自殺者や犯罪者を減らすことにつながったかもしれない。確認するすべはないが、もしかしたらそれが実はかなり多いのかもしれない。だから情報が拡散されること自体が悪いことだとは全然思わない。

しかし、逆のパターンもかなりあるんだろうなとも容易に想像できる。つまり福祉が介入する必要がない人まで診断をとってそれを振り回しているケースもあるんだろうなと。しかしまあ、それも確認するすべはない。当事者会の有名人も、精神医療者も、統計学者も、誰も分からないだろう。なんせそもそも定型と発達障害の明確な境界線がないわけだから。