俺は勉強が苦手だった。小学校ぐらいまではついて行けていたのだが高校になる頃には完全に落ちこぼれになっていた。
授業が理解できない、家で自習が一切できない、定期テスト前も勉強できない、これらによって高校の頃には学年ワースト3位以内をずっと争っていた。ちなみに、俺の高校では前回定期テストの成績下位者には“とくべつ”に補講と称して今回どんな問題がテストに出るかほぼ教えてくれるプリントを配ってくれていた。それを見て勉強すれば最低ラインの及第点は取れる算段になっていたのだろう。しかし俺はそれすらも全くやらなかった、というかやれなかった。あまりにもダメすぎて学年で一番優しい先生から「私がこんなに怒ることなんてないよ!」と言われたのを覚えている。
しかし、ひとつ言えることがあって、俺は決してやる気がないわけではなかった。テスト前なんかは「よし頑張るぞ!」といつも思っていた。
まず、テスト一週間前は部活停止期間となっていた。俺はいつも「これで十分に勉強ができるぞ」などと息巻いていた。一週間前から少しずつやれば最下位どころか上位に入れるかもしれない、などと自分に淡い期待を寄せていた。
例えば月曜からテスト一週間前がはじまったとしよう。
当然、月から金までは一切やらない。息巻いていたのが嘘のように何もやらない。たぶんこの時点で土日に賭けはじめているのだろう。「土日丸々使えば、その気になれば、20時間ぐらいやれる…」などと息巻きだす。
土曜日、普通に飯を食ってテレビを見ていつも通りのダラダラとした一日を過ごす。やはり、息巻いていたのが嘘のように机に座りさえしない、できない。いつもの休日とほとんど変わらない時が過ぎていく。しかし心のなかは焦りが大きくなりはじめている。しかし一方で「夕方から始めて深夜までやれば8時間ぐらいは勉強できるな、よし!」などと息巻きはじめる。
しかし当然やらない。普通に夕食を食って、ゴールデンのバラエティー番組などを見て、深夜にやってるちょっとエッチなテレビ番組を見て、深夜にやってるちょとエッチな映画を見て、後は部屋にこもり、ラジオを聴いたり漫画を見たりオナニーをしたりする。腹が減ってきて夜食を食って、それで気合いを入れようとする。当然気合いなど入らない。ムラムラしてきてもう一発オナニーをする。気がつけば朝方、風呂に入って就寝。
日曜日、いよいよ「今日しかない!」と自分にはっぱをかける。しかし当然の如くやらない。とりあえず今日は夜遅くまでがんばるぞ、ということでコーヒーを用意する。後はテレビを見たりいつもの休日のようにダラダラと過ごす。とうとう夜になる。「もう覚悟を決めてやるしかない!」と息巻く。しかしやらない。夜中、「そういえば今日は紙類のゴミの日だったな…」などと気付く。深夜、ゴミ置き場をエロ本を探して回る。気がつけば3時を過ぎている。とりあえず夜食を食う。しかしやらない。4時を過ぎる。「もうどうしようもない…」と思い、風呂の中で英単語だけでも覚えようと、英単語を書いたプリントをもって入浴。これが一週間で唯一やった勉強。10分程度だろうか。さすがに覚えてないが。
月曜日(テスト当日)、ほぼ徹夜で登校。勉強もしてないのに徹夜、つまり意味もなく寝不足。教室に入り、席に着く。みんながテスト直前の勉強をしている。自分もやらなきゃと思い適当に教科書などを見る。テストが始まる直前の約10分程度の刹那の勉強。これが一週間で唯一やった勉強2。まあ、日曜に風呂でやったから唯二か。
つまり1週間=186時間でやった勉強時間は、計20分程度。やらねば!と覚悟を決めた時間と、やらねば…と焦っていた時間は、計100時間以上。
心だけ疲れ果てて一切行動が伴っていないという。
まさに今の俺だあ。