ビーバイユー公式Xのポストには「1階スペースにて待機」と書いてあったのだが、その1階スペースというのが分からない。入口のエレベーターのある狭いスペースはあるが誰もいない。外にはまばらに人がいてそのいくつかはヲタの人たちと思われる。ただ確実にそうだとはいえない。少し人が密集しているところがあってどうやら寄せ書きのようなものを書いている。この人たちは間違いなくヲタだろう。聞いてみようかなと思った。しかし話しかける勇気がでずその集団の周りをうろうろするだけという。そのときエレベーターのある狭いスペースの隣の薄暗い倉庫のような場所からかすかな人のざわめきが聞こえてきた。行ってみると「えー今回の説明としましてはー!」などと説明をしている人がいた。どうやらライブの説明のようだ。「えー、ビーバイユーもね!一時はなかなか人がこなくてね!1人だけなんてこともあって、対バン運営の人からも冷たくされたりしてね、がはははは!でもね、いまこうやってね沢山の…」みたいなことを喋っていた。ここではじめてビーバイユーの現場というものに遭遇できた気がした。むかし乃木坂の制服のマネキンの京都全握を思い出したな。ワクワクするも誰も話す人がおらず心細いという。たしか寒い日で早朝列に並びながら尿意に襲われて膀胱が破裂しそうだったな。まあいいか。
おどおどしているとスタッフの人がどこに並べばいいかなど教えてくれた。すごく優しい感じだったので、その優しさに便乗してか、さらに俺は執拗におどおどしまくっていた。は、初めてなんです…まるで真面目で地味だけど顔のベースはすごく美しい処女の少女のように(実際には小太りの小汚いオジサンだけど)俺はすこし不安そうな顔でおどおどとしていた。
500円でドリンクのコインを貰い、エレベーターでライブ会場のある階へと上がっていった。S席は指定席なのだがA席は自由席、といっても前2~4席目という特等席、ちなみにS席は最前。俺はA席だったのだが、どこに座るか悩んだ。3列目の真ん中が空いている!ここは相当いい席だ!しかし出しゃばりすぎな気もする、そんなことを考えているうちに誰かがそこに座った。他の席もどんどん埋まっていく。急がねば。けっきょく俺は3列目左端から2番目に座った。
隣に大きなカメラを持った人が座った。話しかけてきた。チケットの番号何番です?これって番号順なんですかね?などと聞いてきた。その人は俺よりもひとつ前のチケット番号だった。え、俺この席座っちゃダメなのかな、いや、スタッフの人が自由席って言ってたよな、などと思い出して、「来た人から好きな席に座っていくみたいです」と答えた。
ライブ会場内にある前物販に並ぶことにした。ビーバイユーはCDアルバムを発売しており、2枚購入すると1枚は限定ジャケット版*1となるらしい。とりあえずそれがまだ残っているか確認して、あれば2枚買う、そしてとくに思い入れのある4人のメンバーのデコチェキ(デコレーションチェキ)券、これを必須条件として、もし余った金があれば、たとえばCDアルバムの限定ジャケットが終了していれば、他の物を買おうと思った。けっきょく終了はしていなかったのでCD2枚とデコチェキ券4人分を購入した。これで20000円。実はオリジナルTシャツとオリジナルタオルを購入してそれを身に着けてライブ後物販のチェキトークに参加しようなどとも考えていたのだが、金額的にたじろいでしまった。しかしこれが後の後悔へと繋がる。
トイレを済ませて席に戻った。俺は、席に戻るまでの間、ずっと考えていた。隣に座った人とのあの会話について。それで俺は恐る恐る、今度は俺の方から隣の人に話しかけた。「あの、この席の方がいい写真撮れそうなら席変りましょうか?僕はスマホで撮るだけなので…」「ははは、大丈夫大丈夫、こっちからこうやって撮ろうと思いましてね」その人は前後に移動するジェスチャーをしながら応えた。俺の隣すなわちその人は一番端の席なので端の方が自由に動きやすいのでいいらしい。
ライブ開始まであと数分となった。俺は出発前に購入した使い捨てサイリウムの用意などしていた。するとその人が再び話しかけてくれた。「誰が好きとかあるんですか?」「みんな好きなんですけど、とくに思い入れがあるのは諸星めあちゃんと、愛洲澪ちゃんと、綿谷湊ちゃんと、満月咲莉花ちゃん…、誰が好きなんです?」「ピンク色担当の満月咲莉花ですね、いろんなアイドルのSHOWROOM見ていて思うのがどうしても内輪感というか、入りづらい感じになるんですが、彼女はそういうのがないというか、すごいなと思って…」…などと会話をした。うれしかったな。最初から最後まで誰とも話さないつもりだったので。
*1:後でビーバイユー公式Xのポストを確認すると限定ジャケット版ではなく差し替え用限定ジャケットが貰える、つまりCD自体は2枚とも通常版